2013年に新卒で入社した後、4年間同じ部署で働きました。企画系の部署。当時の職場の状況や、それをどう受け止めたかの話。
一言、とりあえず上司がしんどい人でした。ドラえもんのジャイアンみたいに偉そうな人で、でも内心は小心者で素直にコミニケーションが出来ない(中学生の恋愛かよ)40代後半の管理職。変なコンプレックスがあり、西洋人が大嫌い。早稲田の野球部出身で、伝統的な部下への「かわいがり」を良しとするタイプ。このジャイアンが直属のグループ長で、この人仕事は出来たもんだから、その後室長になったり計4年間お付き合いすることとなる。
フェアに語りたいので書いておくと、僕自身も若くてとがっていたので、それが気に食わなかったんだろうというのは百歩譲って認めたい。社会人としての言葉選びや受け答えがぎこちなく、合格点でなかったかもしれない。
このジャイアンお得意のかわいがりがしんどかった。会議に資料を持っていっても、一瞥して気に食わないと内容は見てもらえない。こちらがプレゼン中も終始にやけていて、最後に「終わってるな」と抽象的に罵倒される。外国人が嫌いで、ビジネスパートナーの欧米人のことは「毛唐(けとう)」と差別的な呼び方をする。当時から僕自身がヨーロッパの女性と付き合っていたことも、ジャイアンにとって気に食わない材料の一つだった。週末はたびたびジャイアンの趣味のマラソンにつきあわされ、ハーフマラソンやフルマラソンにも何度も出場した。気づけば勝手にエントリーされている。飲み会の立て替えをしても絶対に自分からは払いにこないので、毎回僕の方からお伺いを立てる。もっと色々あるはずなんだが脳がデータを消去しているようで、ぱっと出てこない。
魚と組織は頭から腐るというが、ジャイアンのおかげで部内の雰囲気も最悪で、上が下をいじめる文化が蔓延していた。特に僕の担当の先輩のやり方がひどく、例えば日中のオフィスで急に「お前靴脱げよ」と言われ、仕方なく脱ぐと、当時の薄給で買ったノーブランドの革靴を職場のみんなの前で馬鹿にされた。次の日は時計でした。
かなりきわどい所まで行った時期もあり、家族にも頻繁に相談をして、法律に関わる人にも相談をした。ハラスメントとなる発言は、全て日時とともにノートに証拠を残した。産業医にも相談しましたが、それはなぜか上司に筒抜けでした。
家族や友人にも転職を勧められましたが、そこに踏み切ることはありませんでした。なぜか?いま振り返れば、単なるプライドだったと思います。
いまここから逃げたら負けを認めたことになる。絶対に見返す。そういう気持ちで時間をやり過ごしました。
大企業だったので4年でローテーションが来て部署異動することになりました。そこでは真逆の、本当に尊敬できる上司や先輩にたくさん出会い、仕事もすぐに認めてもらい、運も重なってすぐにブラジルに赴任させてもらえることになりました。例の革靴の先輩よりも早いタイミングでの海外出向となり、赴任前に顔を合わせた時には苦い顔をしていたこと、よく覚えています。ジャイアンは、僕が異動してほどなく畑違いの部署に飛ばされました。事情は知りませんが、何かがあったんだと察しています。
いま世界の色んな人間と自分を比べてみて、なるほど日本人はプライドの高い人たちだと思います。自尊心のためなら竹やりで戦車につっこんでく感じ。でもこれはどうしても変えられないものなので、それを客観的に見られていればOKぐらいで捉えています。
当時、会社を辞めて得られる心の安泰と、それによって失う自分の尊厳、これを天秤にかけていたと思います。尊厳なんて立派な言葉を使うのもちょっと可笑しいですが、当時のスキルも経験もない僕にとってはそれが唯一のよりどころでした。
セルフケアの大切さが広まって久しく、僕もその唱道者の一人です。あなたの人生より大きな仕事なんてないんだから、身の危険を感じたらさっさと辞めましょう。これが一番大切なメッセージ。いまタイムスリップして当時に戻れるとして、すぐに辞めるように自分を説得すると思います。それはそれなりに、また違った楽しい人生を歩んでいたと思うから。
ただ、逆の方向も応援したい。いまの持ち場で踏ん張っているあなたにも頑張れと伝えたい。当時の僕のように若く、不器用でも頑張っている人。今後自信を持って人生を生きていくには、自分のプライドを死ぬ気で守りにいく瞬間もあって良いんじゃないかと思います。特に大きな会社だと、ローテーションの先に素晴らしい出会いが待っている事もあるから。でも悩んだらちゃんと周りに相談して、ヤバそうな時にストップかけてくれる人やセーフティネットはちゃんと繋いでおきましょう。
いまは転職がより身近になり、仲介のエージェントも煽ってくるもんだから、当時とはまた違った悩みがあるかと思います。若者は知識も経験も少ないから、数年間は社会に搾取されがちですね。
学校で習ったやつ載せておきます。駄目なことを時代のせいにせず、強く進んでいきたいもんです。
ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを 近親のせいにするな なにもかも下手だったのはわたくし 初心消えかかるのを 暮らしのせいにはするな そもそもが ひよわな志にすぎなかった 駄目なことの一切を 時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄 自分の感受性ぐらい 自分で守れ ばかものよ 茨木のり子
