若手の頃にしんどかったことの一つに、職場でプライベートについて根掘り葉掘り聞かれて、なんか結果馬鹿にされるというのがあった。飲み会の場でもそうだが、毎日来る昼食の時間が地味に苦痛で、週末は誰と何をしたかとか、家族のことだとか、上司や先輩に一方的に情報提供を強いられて、最後には上から目線で有難い助言を頂くことと相成る。
これにはいくつか要因があったと思うのだが、ひとつ大きいのは圧倒的に話題がなかったこと。平日は夜中まで働いて帰ってメシを食って寝て、週末も疲れてぐったりしているので、みなさしたる話題がなく、結果お前なんか面白い話ないのみたいな流れになる。俺だってそんなフレッシュな話が毎日あるわけもなく、苦し紛れに身を削った話をすることとなる。若手はすべらない話が出来ないとダメみたいな空気もあり、ただそんな空気の中でウケる訳もないので、大体変な空気になる。吉本の芸人だって花開くのに何年もかかるのに、入社すぐのサラリーマンには無理だっての。若手が一方的に話をして先輩や上司が品評するという構図もしんどかった。相互のコミニケーションでなく、なんか面白いことやれよみたいな部活ノリの延長。
振り返れば、いらぬサービス精神というか、無駄に頑張って話題提供する必要なんてなかったし、もう少しうまくドッジして毎日をやり過ごすことも出来たかもしれないが、当時の不器用さを思い出すと難しかったとも思う。というか俺自身がオッサンになってきた今、右も左も分からない若者をそうやって悪意を持って追い込むようなやり口は下品だろ、との思いの方が強い。
たしかに、人を惹きつける話し方というのは社会人としてひとつ重要なスキルにはなるが、そんなもんは一所懸命仕事してればそのうち身につくから。
こちらに来て有難いのは、そういうしんどい機会にあまり遭遇しないこと。ひとつに、首を切られるのでマネジメントがハラスメントに敏感というハード面でのおさえ。ソフトな面では、みな自分の家族やら子供やら趣味やらで忙しく、他人のことを深く詮索しない空気。個人的な話題については時に水を向けられるような場面もあるが、軽く流すとそれ以上は追及してこない。俺は話すより聞いてる方が楽しいタイプなので、これぐらいの空気感が嬉しい。
Good fences make good neighbors.とは良く言ったもので、快適に生きていける他人との距離がある。日本語で一番近い表現は、親しき中にも礼儀あり?それは職場でも、家族でも、趣味の仲間内でもそうかもしれない。聞くことより、聞かないことにその人の品性は出る。
日本の会社員の意識も年々よくなってきているから、こういうしょうもないことで悩む若手がもうそう多くないことを願っている。
